占星術師たちのインド 暦と占いの文化
出版社:中央公論社
出版年:1992年7月
『ブリハット・サンヒター』について
インド占星術のもっともすぐれた古典であるヴァラーハミヒラの『ブリハット・サンヒター』( 『大集成』)には、客が来たときその容貌や挙動によって客の悩みごとを言い当てる方法が詳しく述べられている(121ページ参照)。(p.39) 上述の参照先にて『大集成』に関して以下のように述べられている。
占星術師は客が来たとき、すばやく観察してその問題を言い当てなければならない。それに成功すると客は自家薬籠中のものとなる。そのことを物語るのは第50章である。「身体の相」と題するこの章でヴァラーハミヒラは客としてやってくる人物(質問者)を、質問者がやってきた方角、発言内容、住んでいる土地、所持品、質問者自身や付添い人の身体の特徴と振る舞い、さらに発言内容から判断する方法を述べている。(p.121)
アーユルヴェーダとインド占星術
アーユルヴェーダの教授が占星術師と親しくしていることを知って、わたしは医療人類学者マーク・ニヒターの論文を思い出した。この論文は南インドで行ったフィールドワークにもとづき、病気の治療における医者と患者の関係について述べたものである。ここでニヒターはアーユルヴェーダの医者と占星術師がきわめてよく似た立場にあることを指摘している。(p.40) 医者はトリドーシャ理論を用いて、占星術師はホロスコープを用いて相手の心を開かせる。両者とも「鋭敏な観察力と繊細なコミュニケーション術とか要求される」(p.41)。 このように医者と占星術師の立場がよく似ているだけでなく、実際に両者が連携して一人の患者(客)に対処する例があることも、ニヒターは報告している。(p.42)
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